
「薬剤師の海外医薬品相談室」ブログへようこそ! 前回は、日本では未承認の医薬品や成分が持つリスクについてお話ししました。安易な自己判断が危険を招く可能性をご理解いただけたでしょうか。
今回は、安全な個人輸入を行う上で絶対に避けては通れない、日本の法律「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」について解説します。 「法律」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、個人輸入に関して押さえるべきポイントは意外とシンプルです。一緒に確認していきましょう。
1. なぜ個人輸入が認められているの?
まず、「そもそもなんで個人輸入が許されているの?」と疑問に思うかもしれませんね。 これは、日本の薬機法が、「自己の疾病の治療」や「自己の身体に直接使用するため」という目的の場合に限り、特定の医薬品や医療機器などを「個人が自己責任で輸入すること」を例外的に認めているからです。
つまり、あなた自身が使う目的に限定されているということです。もし、この目的から外れてしまうと、それは単なる「輸入」ではなく「業」とみなされ、厳しい規制の対象となります。
2. ここが重要!輸入できる「量」の制限
個人輸入が認められるとはいえ、無制限に何でも輸入できるわけではありません。薬機法では、以下の通り輸入できる量に厳格な制限を設けています。
- 医薬品(要指示薬・処方箋医薬品):
- 用法用量からみて「1ヶ月分以内」が目安です。
- 医師の処方箋が必要な医薬品や、使用に特に注意が必要な医薬品がこれに該当します。
- 医薬品(その他):
- 用法用量からみて「2ヶ月分以内」が目安です。
- 一般的な市販薬などがこれに該当します。
- 化粧品:
- 1品目あたり24個以内(標準サイズ)。
- 医薬部外品(薬用化粧品など)もこれに準じます。
- 医療機器:
- 1セット(または個人が使用する範囲の妥当な数量)。
この「量」の制限は、あなたが個人的に消費する範囲を超えていないか、転売目的ではないか、などを判断するための基準になります。もしこれを超過すると、税関で止められたり、法律違反となる可能性がありますので、くれぐれも注意が必要です。
3. 絶対にやってはいけない!販売・譲渡の禁止
最も重要なルールの一つが、個人輸入した医薬品や化粧品などを「他人に販売したり、譲り渡したりすること」は固く禁止されているという点です。
- 家族や友人にあげるのもNG: 「使わないから」「余ったから」といって、家族や友人に無償で譲る行為も、薬機法違反となります。
- フリマアプリやオークションでの出品もNG: 当然ながら、金銭のやり取りがある販売行為は最も厳しく取り締まられます。
これは、あなたが輸入した製品が日本の基準を満たしているか不明であり、万が一、それを服用した人が健康被害を受けた場合に、その責任を追及できないためです。このルールを破ると、「無許可販売」や「無許可製造」とみなされ、逮捕や罰金といった非常に重い罰則の対象となります。
まとめ:ルールを知り、賢く利用する
個人輸入は便利ですが、日本の薬機法が定めるルールを理解し、その範囲内で利用することが何よりも大切です。特に「量」の制限と「販売・譲渡の禁止」は、必ず守らなければならない基本中の基本です。
不安なときは
⚠️個人輸入は情報が出回りにくく、正確なことを調べるだけでも一苦労です。
そんなときはこちらから質問してください。あなたの疑問を解消できるかもしれません。
次回は、薬機法の具体的な違反事例と、実際にどのような罰則があるのかについて詳しく解説します。どうぞお楽しみに!